【映画のこと】
「万引き家族」を鑑賞してきました。
その感想を書き留めておきたいと思います。
以下、感想ですが、多少ネタバレがあります。
気になる方はお控えください。
※映画「万引き家族」とは、第71回カンヌ国際映画祭、長編コンペティション部門にて、最高賞のパルムドールを受賞した作品のこと。この作品は、是枝裕和監督(55)によって、制作された。
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盗んだのは、絆でした。
感情がほとばしるとは、こういうことか、と思った。
それは演技とは思えないほどの、感情そのもの。
人から生まれる、本当の感情。
本当だけの感情。
演技なんていらない。
人間の本質的な感情の機微。
深く、深く、潜ったものだけにしかわからない。
警察官の質問。
果たしてそれは正義なのか、悪なのか。
常識を疑わない大人は、時に正義を勘違いする。
わたしには、正義を振りかざした悪意に見えた。
相手の核心をえぐるための、意図した悪意。
傷つけて、もう二度と立ち直れなくするための、悪意。
ただし、間違ってはいないという事実。
事実を突きつけるだけの、事実。
とても悲しい正義だと思った。
それを正義と言うのなら、
あまりにもこの世界は残酷すぎる。
本当の家族ってなんだろう。
血のつながりや、過ごした時間や、思いやりや。
そんな薄っぺらい言葉の羅列で、
片づけられるものなのか。
きっとそこに愛はあった。
きっとそこに家族はあった。
たとえそれが、事実だとしても。
人生には変えられない、事実もある。
その瞬間があったことを。
その瞬間を生きたことを。
みんなはお守りのように、心に抱いて生きていく。
何かある度に、あの瞬間を生きたことを思い出す。
一緒には生きていけないから。
一緒には暮らしていけないから。
愛している、
愛していた、
だからこそ、
正しく生きてほしかった。
子どもは大人が思っているよりも、大人だ。
世界の仕組みをわかっている。
本当の正しさとは、何かを知っている。
だからこそ、裏切りは許せなかった。
自分を裏切ったことではない。
生きていくことの裏切り。
正しく生きていくことの裏切り。
子どもは大人が思っているよりも、強かだ。
守られる、弱い立場なのは変わらない。
しかし、思っているより強かに生きていける。
一度誰かに本気で愛されたなら。
その瞬間があったことは、きっと忘れない。
愛された記憶は忘れない。
同じことは繰り返さない。
負の連鎖を断ち切る。
それこそが、彼女の選んだ道。
そして、そこに家族はあった。
彼らにとっての家族は、
その瞬間にだけ存在した。
そして、大人も知ったのだ。
自分じゃ足りないということ。
もう二度と会えないということ。
もう二度と会わないと決めたこと。
大人も、子供も、本当のことを知った。
大きな、大きなものを失って初めて、
大人になりきれなかった大人は、知った。
本当のことを知った。
本当のことを守った。
自分が生きる人生、
それ以上に必要なものって
あるだろうかと思う。
愛はあった、
家族はあった、
その瞬間はたしかに存在した。
それしか、それだけしか、言えない。
わたしには、それしか言えない。
希望、祈り、わからないけど、
それだけしか言えない。